自衛隊法改正による「防衛秘密」保護制度の導入に反対する


 10月5日、「テロ対策支援法案」とともに国会に上程された自衛隊法改正案は18日衆議院で可決され、参議院に送られた。メディアとジャーナリ
ズムの活動に関わる私たちは、今回の自衛隊法改正により「防衛秘密」の保護制度が導入され、自衛隊に関する情報が広く秘密として秘匿され、
報道の自由と国民の知る権利が過剰不当に制限されようとしていることに深い憂慮を表明する。
 改正案によれば、防衛庁長官は「自衛隊についての別表第四に掲げる事項であって、公になっていないもののうち、我が国の防衛上特に秘匿す
ることが必要であるもの」を「防衛秘密」として指定することができ(96条の2)、「防衛秘密を取り扱うことを業務とする者」が「防衛秘密」を漏らした
ときは最高5年の懲役に処せられ(122条1項)、漏洩を「共謀し、教唆し、又は扇動」した者も3年以下の懲役刑が科せられる(4項)。漏洩の未遂
(2項)、過失による漏洩(3項)、国外犯(6項)も処罰の対象とされる。秘密指定の対象となる「別表第4」には、自衛隊の運用・計画、防衛に関して収
集した重要な情報、防衛力の整備に関する計画、防衛の用に供するものの種類・数量など、自衛隊や防衛に関する事項が1号から10号にわたっ
て広く列挙されている。また、防衛秘密を漏らしてはならないとされる「防衛秘密を取り扱うことを業務とする者」には、「国の行政機関の職員のうち
防衛に関連する職務に従事する者」と、「防衛庁との契約に基づき防衛秘密に係る物件の製造若しくは役務の提供を業とする者」で、防衛庁長官
により防衛秘密の取り扱いの業務を行わされている者(96条3項)が含まれる。
 今回の自衛隊法改正措置は、自衛隊員の守秘義務規定はそのまま存置した上で、それに加えて、自衛隊に関する広範な情報を「防衛秘密」とし
て直接保護し、自衛隊員だけでなく、一般国家公務員や民間の防衛産業の従業員なども広く漏洩処罰の対象とし、漏洩の共謀・教唆・扇動も処罰
するだけでなく、守秘義務規定では対象となっていない未遂犯、過失犯、国外犯も処罰対象に加え、漏洩には守秘義務規定の5倍もの重罰を科す
もので、まさに新たな国家秘密保護制度の創設に他ならない。これは、実質的には85年に自民党が提案し、国民の強い反対で廃案となった「国
家秘密法案」を部分的に導入する役割を果たしていると言える。
 そもそも、このような自衛隊員の服務規律を超える新たな秘密保護制度の新設という重大な措置を、自衛隊法の改正という方法でなしうるかに
ついては、根本的な疑問がある。自衛隊法という枠から大きくはみ出す越権措置と断ぜざるをえまい。
 また、これらの措置を含む自衛隊法の改正が、「テロ対策支援法案」とも連動してテロへの対処を名目に提案されているが、今回のテロ行為と
「防衛秘密」保護制度新設とを繋ぐ根拠は何一つ示されていない。もしテロ対処とは別に、昨年9月に逮捕された海上自衛官の漏洩事件などへの
対応というのであれば、今回のようなテロ対処のどさくさに紛れ込ませて事前の検討の余地なく突然提案するような姑息なやり方はとるべきでは
ない。
 改正案では、防衛庁長官が「特に秘匿することが必要である」とみなしさえすれば、自衛隊や防衛に関する広範な情報が秘密として国民の目か
ら隠されることになる。長官による裁量を厳格に縛り、秘密の濫用をチェックする仕組みは、そこには用意されておらず、国民の知る権利が不当に制
限される危険は高い。また、漏洩禁止対象や処罰行為を広げ、重罰を科すとともに、漏洩への教唆・扇動なども処罰の対象とすることによって、ジャ
ーナリストの取材行為や研究者・市民団体などによる調査活動が制約や妨害を受け、場合によっては処罰される可能性が広がり、強まることにな
る。防衛情報の取材・調査・監視などのジャーナリスト、研究者、市民の正当な活動が「防衛秘密」の保護の名目で制限され、抑圧されてはならな
い。
 民主主義社会では、本来防衛に関する事項は広く国民に公開されるべき情報であり、それへの取材や調査も当然広く認められるべきである。秘
密保護の強化と情報の統制を図る今回の法改正は、情報公開時代に逆行する措置だと言わなければならない。私たちは、このような自衛隊法の
改正に強く反対する。

2001年10月23日

メディア総合研究所

関連データ 

○ 民放連 自衛隊法改正案に関する民放連・報道委員会見解

○ 民放労連 「テロ対策特別措置法」、自衛隊法改正案に反対する声明

○ MIC(日本マスコミ文化情報労組会議) 「報復戦争への自衛隊の参戦に反対する」

○ 新聞労連 「防衛秘密」を盛り込んだ自衛隊法改正案の成立に反対する声明